花粉症
花粉症~静岡皮膚科は花粉症治療に力を入れています~
静岡県は県民の約半分が「花粉症」であり、全国でも有数の「花粉症患者が多い県」です (参考文献 1)。そのため、『静岡皮膚科』では花粉症治療に力を入れています。患者さんの「鼻」「目」「皮膚」に関するトラブルを、一つのクリニックでまとめて治療します。適切な科学的根拠に基づいて国際標準の治療法を提案し、患者さんお一人お一人に合う方法を見つけるお手伝いをさせていただきます。
花粉症の「鼻の症状」でお悩みの方へ
花粉によるアレルギー性鼻炎では、くしゃみ/鼻水/鼻詰まりなどの症状が出ます。最も効果的な治療法は、
「ステロイドの点鼻薬」
です (参考文献 2)。「飲み薬よりも効果が高い」&「眠気などの副作用が出ない」ので、世界中でとても強く推奨されています。
特に、「1日1回タイプの点鼻薬」が使いやすいです。日本国内で利用できる製品としては、次の3種類があります (参考文献 3)。いずれも市販品はなく、病院でのみ処方される薬です。
- ナゾネックス (モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)
- アラミスト (フルチカゾンフランカルボン酸エステル)
- エリザス (デキサメタゾンシペシル酸エステル)
どの点鼻薬も良い薬ですが、それぞれメリット/デメリットがあります。
例えば、『エリザス』という製品は「粉末状」の点鼻薬です。「鼻内部での刺激感が少ない」「液だれしない」という優れものです (参考文献 4)。これまで「点鼻薬が使いにくい」と感じたことがある方にこそ試していただきたい薬です。参考までにエリザスの使用方法はこちらのページ上の動画で確認できます。
ただ、エリザスの弱点としては、値段の高さが挙げられます。28日分(4週間分)の薬代は、3割負担の方で「約740円」かかります (2024年2月現在)。
※エリザスにはジェネリック医薬品が存在していません。
一方、金額面の安さを重視する方には、『ナゾネックス』のジェネリック医薬品がオススメです。こちらは28日分(4週間分)の薬代が、3割負担なら「約300円」。先程のエリザスに比べると半分以下に抑えられます。
しかし、ナゾネックスは液体タイプの製品なので、「使用後に液だれする」「噴霧したときに刺激やにおいがある」と感じる方もいらっしゃいます (参考文献 3)。この辺りが気になる方はエリザスなど他の製品を選ぶ方が良いでしょうし、気にならない方はナゾネックス後発品を選ぶと良いでしょう。ナゾネックス後発品の使用方法については、下の動画で確認できます。
どの薬が合っているかはお一人お一人違います。静岡皮膚科では、患者さんのご要望をよく伺って、その方に適した薬剤を提案するようにしております。
なお、「抗ヒスタミンの飲み薬」を花粉症治療に使ったことがある方もいらっしゃると思います。ただ、上述した「ステロイド点鼻薬」よりも効果が劣るため、飲み薬を優先して使用する必要は特にありません。ただし、「点鼻薬は苦手…」という人は、まずは飲み薬だけで治療を開始してみることも可能です。
抗ヒスタミン薬の飲み薬を使う場合には、眠気が出にくい薬剤を選ぶことが望ましいです (参考文献 2)。抗ヒスタミン薬の中には「運転禁止」の薬剤もありますので、ドライバーの方は特にご注意下さい。運転に関して制限がない安全な薬は、下の4種類です (参考文献 5)。
- アレグラ (フェキソフェナジン塩酸塩)
- クラリチン (ロラタジン)
- デザレックス (デスロラタジン)
- ビラノア (ビラスチン)
この4種類の中でも、特にアレグラ、デザレックス、ビラノアは脳への影響が少ないとされています (参考文献 6)。多くの方が使いやすい薬と言えるでしょう。特にデザレックスは、「1日1回飲むだけで良い」「食後に飲んでも、空腹時に飲んでも良い」ということで、生活リズムが不規則な方などでも使いやすいです。
なお、「眠気が出にくい薬だと、効果も弱いのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはそのようなことはありません。「眠気の強さ」と「花粉症治療の効果の強さ」は相関しませんので、眠くなりにくい薬を安心して選んで頂けますと幸いです (参考文献 5)。
以上、色々な薬を説明しましたが、静岡皮膚科では、「副作用の少なさ」「ライフスタイルに合わせた使いやすさ」「金額の安さ」などを総合して、患者さんに合った治療法を提案することが可能です。ご要望等がございましたら、何でもお気軽にご相談下さい。
花粉の「目の症状」でお悩みの方へ
花粉による「アレルギー性結膜炎」では、目のかゆみ、充血、涙などのトラブルが起きます。目の悩みが続く方に最も推奨される治療法は、
「抗ヒスタミン作用がある目薬」
です (参考文献 2,7)。「飲み薬よりも効果が高い」&「適切な目薬を選べば眠気などの副作用が出ない」というメリットがあります。「鼻の症状」と「目の症状」の両方がある方は、「ステロイド点鼻薬」と「抗ヒスタミン剤の目薬」を併用しましょう。
実際に治療に用いる目薬の例としては、次の製品が挙げられます。
- アレジオンLX点眼液 (エピナスチン塩酸塩)
- アレジオン点眼液 (エピナスチン塩酸塩)
- パタノール点眼液 (オロパタジン)
『アレジオンLX』は1日2回、『アレジオン』と『パタノール』は1日4回使用します (参考文献 8)。効き目が長いアレジオンLXは、「昼間は忙しくて目薬をさす時間がない…」という方にとって使いやすいです。8時間効果が持つので、「朝8時」と「夕方16時」などに使うだけで大丈夫です (参考文献 9)。
また、ソフトコンタクトレンズの上からでも使用できるのが、アレジオンLXとアレジオンの特長です (参考文献 9)。本来は花粉症シーズンはコンタクトを使用しないことが望ましいですが (参考文献 7)、「外出中はどうしてもコンタクトがいいなぁ。」という方もいらっしゃると思います。そのような方にとっては、コンタクトの上からでも使える目薬は便利と言えますね。
「1日2回だけでOK」&「コンタクトの上からでもOK」というアレジオンLXは、一見万能に見えます。ただ、実は「値段が高い」という弱点があるので要注意です。アレジオンLXにはジェネリック医薬品は存在せず、約1ヶ月分の薬代が3割負担の方で「約780円」かかります。
値段を抑えたい方は、ジェネリック医薬品が存在する「1日4回タイプ」の目薬がオススメです。
- コンタクトレンズの上から使いたい
⇒アレジオン後発品 約1ヶ月分で「約330円」 - コンタクトレンズの上からは使わない
⇒パタノール後発品 約1ヶ月分で「約140円」
を選ぶことが可能です。
このように、花粉症の目薬選びでは「点眼回数の少なさ」「コンタクトレンズの上からでも使える利便性」「値段の安さ」などを総合的に考慮して、ご自身に適した製品を選ぶことになります。ご不明点などございましたら、何でもお気軽にご相談下さい。
なお、目薬を使用する場合には「正しいさし方」を知ることが重要です。目薬の使い方を間違えている方は少なくありません。目薬をさすのが苦手な方は、ぜひ下の動画をご覧下さい。
※「目薬をさすのがどうしても苦手…」という方は、目薬よりも効果は劣りますが「抗ヒスタミン剤の飲み薬」で治療する選択肢もあります。抗ヒスタミン薬の選び方については、上で記した「鼻の症状」の中で記載しておりますので、そちらをご参照下さい。
花粉症の「皮膚の症状」でお悩みの方へ
花粉症では「鼻」や「目」の症状が有名ですが、「皮膚」の症状も珍しくありません。過去のアンケート調査によると、
・35.3%の方に「皮膚症状」がある
・19.4%の方は「顔・首周り」に出る
・7.9%の方は「全身」に出る
との報告があります (参考文献 10)。さらに、
・子供は大人に比べて、花粉症の皮膚症状が出やすい
・子供では約半数に皮膚症状があり、これは「涙目」「目の痛み」で困っている人よりも多い
との報告もありますので、お子さんは特に注意が必要です (参考文献 11,12)。
花粉による「アレルギー性接触皮膚炎」では、肌の赤み/痒みなどのトラブルが起きます。基本となる治療法は、
「ステロイドの塗り薬」
です (参考文献 13)。顔に症状がある場合には、比較的弱めのステロイド外用薬を使用することが一般的です。1日2回程度、症状が改善するまでの短期間塗ります。
ステロイド外用薬を顔に長期間塗ることは、副作用の観点から望ましくありません。症状が長引く場合などは、ステロイド以外の塗り薬を活用することもあります。例えば、皮膚の乾燥を合併している方に保湿剤を処方したり、アトピー性皮膚炎を合併している方にタクロリムス(プロトピック)軟膏を処方したりします。
このように静岡皮膚科では、皮膚の症状の重さや部位、合併症の有無に応じて、お一人お一人に合わせた適切な治療法を提案いたします。「鼻」「目」「肌」すべてのトラブルをまとめて診察可能ですので、いずれもお気軽にご相談下さい。
なお、花粉症治療の前提として「花粉に接する機会を減らす」ことも大切です。環境省の花粉症環境保険マニュアルによると、花粉を避けるポイントとして、
- マスクやメガネを着用する
※花粉症用メガネは特に効果的 - 花粉が付着しにくい服装を選ぶ
※外側にウール素材の服を着るのは避ける - 帰宅時には花粉を払って家の中に持ち込まない
- 手洗いやうがい、洗顔を行う
- 室内の掃除/換気を行う
※換気の際は、窓を開ける幅を10cm程度にし、レースのカーテンをする - 花粉が多い時間帯の外出を避ける
ことが挙げられます (参考文献 14)。ご参考にして頂けますと幸いです。
参考文献
- 松原 篤ら. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019 (1998年, 2008年との比較) : 速報―耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として. 日耳鼻. 2020; 123: 485-90.
- UpToDate. Pharmacotherapy of allergic rhinitis. (2024年2月28日アクセス)
- 秋山 貢佐ら. 鼻噴霧用ステロイド薬における使用感とアドヒアランスについて. 耳鼻免疫アレルギー. 2016; 34: 193-7.
- 内薗 明裕ら. 鼻アレルギー患者ならびに医師を対象とした鼻噴霧用デキサメタゾンシペシル酸エステル粉末製剤の使用印象調査. 耳鼻. 2014; 60: 238-43.
- 角谷 千恵子ら. スギ花粉症におけるアウトカム研究(第5報) : 初期療法における抗ヒスタミン薬の有効性およびCost Qualityの比較. アレルギー. 2006; 55: 554-65.
- 谷内 一彦. 薬理作用から見た理想的な抗ヒスタミン薬治療. 日耳鼻. 2020; 123: 196-204.
- UpToDate. Allergic conjunctivitis: Management. (2024年2月28日アクセス)
- 高村 悦子. アレルギー性結膜炎の点眼治療とセルフケア. アレルギー. 2021; 70: 15-8.
- Santen. 製品・安全性 よくあるご質問 アレジオン / アレジオンLX. (2024年2月28日アクセス)
- 難波 弘行ら. スギ花粉症受診患者へのアンケート調査. 日本花粉学会会誌. 2004; 50: 73-82.
- 増田 佐和子ら. 小児および成人スギ花粉症患者における咳嗽の検討. 小児耳. 2011; 32: 1-6.
- 増田 佐和子ら. 小児スギ花粉症の症状と生活障害についての患児と保護者による認識の比較. アレルギー. 2015; 64: 942-51.
- UpToDate. Management of allergic contact dermatitis in adults. (2024年2月28日アクセス)
- 環境省. 花粉症環境保険マニュアル2022. (2024年2月28日アクセス)
利益相反
なし