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注射不要で痛くないインフルエンザワクチン『フルミスト』について;97%の親が来年も受けさせたいワクチンとは?

[2024.09.17]
3行でわかる!  まとめ

・フルミストは鼻に吹きかけるインフルエンザワクチンで、痛みがなくて満足度が高く「97%」の親が「来年も受けさせたい」と回答しました。


・インフルエンザにかかる確率を8割近く減らしたと報告されており、安全性も高く子供にとって優れたワクチンです。


・従来からある注射タイプのワクチンより効果が長持ちしやすいとされ、インフルエンザ流行前の早めの接種がオススメです(接種は1回だけでOK)。


 静岡皮膚科では、「注射をしなくていい」画期的なインフルエンザワクチン『フルミスト』の予防接種を、2024年10月5日から開始いたします(予約の流れはこちらをご参照ください)。

 

 フルミストはとても良いワクチンですが、日本では承認されたばかりで接種できる医療機関が少ないです(海外ではすでに20年以上の使用実績があります)。

 

 静岡皮膚科は多くのお子さんに受診いただいておりますので、お子さん向けサービスとしてフルミストの接種を行うこととしました(大人向けの注射型インフルエンザワクチンについては当院での取り扱いはございません)。

 

 小さいお子さんではインフルエンザが重症化しやすいですから、ぜひフルミストをご検討いただけますと幸いです。

 

 フルミストについて、メリットやデメリットを説明いたします。

 

フルミストのメリットについて


1. 痛みがなくて満足度が高い


 フルミストは、お子さんの鼻へスプレーするタイプのワクチンです (参考文献 1)。左右それぞれの鼻の中に1回ずつ吹きかけるだけで、あっという間に接種が終わります (鼻への刺激も強くありません)。

 

 従来から用いられている注射タイプのインフルエンザワクチンとは違って、皮膚へ針を刺す必要がありません。したがって、注射による痛みはありません。

 

 フルミストであれば注射が苦手なお子さんでも接種しやすいので、お子さんにとっても保護者にとっても気軽に選びやすく便利です (参考文献 2-4)。

 

 従来の注射タイプのワクチンに比べると、実際に接種経験のある方々で圧倒的に満足度が高いことが分かっています (参考文献 5)。

 

 ドイツで行われた研究では、鼻スプレータイプのインフルエンザワクチンを使用したご家庭の親御さんのうち「97.2%」が、「来年も鼻スプレーワクチンを接種したい」と回答しています (参考文献 6)。

 

 

2. 効果が高い&長持ちする


 フルミストを接種すれば、インフルエンザにかかる可能性を大きく減らせます。

 

 過去の研究をまとめたデータを見ると、ワクチンを接種しなかったお子さんは「18%」の確率でインフルエンザに感染しましたが、フルミストのような鼻スプレーワクチンを接種したお子さんでのインフルエンザ感染率はわずか「4%」でした (参考文献 7)。

 

 つまり、鼻スプレーワクチンのおかげで、インフルエンザに感染する確率が「8割近く減少」したことになります。

 

 また、鼻から投与するワクチンは、注射するワクチンとは異なり、実際にインフルエンザに感染した場合と同じく鼻の粘膜でも免疫反応が起きます。

 

 このおかげで、特にお子さんにフルミストを投与すると、従来のワクチンより効果的で長持ちする免疫を得られると考えられます (参考文献 8-11)。

 

 実際、鼻スプレータイプのワクチンを接種したお子さんでは「1年後でもインフルエンザを防ぐための免疫が活性化したまま」と確認されています (参考文献 12)。

 

 なお、フルミストは安全性も高いです (参考文献 8,9,13-18)。

 

 例えばイタリアからの最新の報告(2024年7月論文掲載)を見ると、フルミスト接種後に生じた副反応は発熱が3.2%、頭痛が1.3%、だるさが0.09%、筋肉痛が0.03%、鼻水や鼻づまりがそれぞれ0.03%という程度でした (参考文献 2)。

 

 重い副反応が出た方はいませんし、注射型と違ってワクチンを刺した腕が腫れることが無いのも嬉しいポイントですね。

 

 

3. 接種が1回のみで済む


 注射タイプのインフルエンザワクチンの場合、日本の添付文書(取扱説明書)では「13歳未満のお子さんでは4週間程度の間を空けて2回接種する」とされています (参考文献 19)。

 

 お子さんや保護者にとっては、タイミングを調整して2回のワクチン接種を行うのは大変ですよね。「通院の手間暇」「金銭的な負担」「注射を我慢する辛さ」がすべて倍になってしまいます。

 

 フルミストの場合、投与は「1回のみ」です (参考文献 1)。スケジュールを合わせる必要もありませんから、その日の予定さえ空いていればいつでも接種することができます。

 

 基本的にインフルエンザワクチンは「10月」のうちに済ませることが望ましく (参考文献 20,21)、先程述べたようにフルミストは効果が長持ちしますので「あまり早い時期に打つと効果が切れないかなぁ」との心配も薄いです。

 

 インフルエンザが本格的に流行する前の早めのタイミングで、お気軽に接種しておくと良いでしょう。

 

 

フルミストのデメリット


1. 対象が「2~18歳」のみ


 フルミストの接種対象となるのは、日本では現時点で「2歳から18歳まで」の方だけです (参考文献 1)。0歳や1歳の赤ちゃん、また19歳以上の大人の方は対象に入りません

 

 大人でもフルミストを使いたい方はいると思いますが、誠に恐縮ながら静岡皮膚科では対象外の方には接種をご遠慮いただいております。

 

 静岡皮膚科で取り扱うインフルエンザワクチンはフルミストのみですので、年齢が当てはまらない方は他院でのインフルエンザワクチン接種をお願い申し上げます。

 

 

2. 接種できる医療機関が少ない


 今年はフルミストの接種が国内で始まる初めてのシーズンです。現時点ではフルミストは国内での流通数が少なく、取り扱い医療機関の数はかなり限られています。

 

 地域によっては「フルミストを使いたいけれど、家の近くで接種できる病院が無い…」というケースもあるでしょう。

 

 静岡皮膚科では、なるべく多くの方にこの良いワクチンをお届けしたいので、可能な限り多めの本数を確保する予定です。ただ、それでも数に限りがありますので、接種希望の方は10月以降なるべくお早めにご来院いただけますと幸いです。

 

 

3. 値段が高いことがある


 フルミストの大きな弱点となりうるのが値段の高さです。8000円から1万円程度で取り扱うクリニックが多いようですが、この場合は従来のインフルエンザワクチンを2回接種する場合よりも金額が高くなりかねません。

 

 静岡皮膚科では、この新しい良いワクチンをなるべく多くの方にご活用いただきたいので、「平日午前」限定ではありますが「6000円」で接種を行うことといたしました

 

 この金額であれば、注射ワクチンを2回打つよりも費用が抑えられるので、気軽に試しやすいかなと存じます。(従来のインフルエンザワクチンの値段は1回あたり4000円程度 (参考文献 22)なので、2回接種なら8000円程度が一般的です。)

 

 なお、申し訳ないのですが、「平日午後」および「土日」に接種される場合は「8000円」としております。これらの時間帯はもともと予約数がいっぱいになりやすいです。

 

 フルミスト接種希望の方が、一部の時間帯にまとめて殺到すると通常の皮膚科診療に支障をきたしかねないため、心苦しいのですが金額に差をつけさせていただきました。ご理解の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

 

<参考文献>
1. PMDA. フルミスト点鼻液 インタビューフォーム. (閲覧日2024年9月16日)

2. Costantino C, Tramuto F, Bonaccorso N, et al. Increased adherence to influenza vaccination among Palermo family pediatricians: a study on safety and compliance of qLAIV vaccination. Ital J Pediatr. 2024;50:126.

3. Kwong JC, Pereira JA, Quach S, et al. Randomized evaluation of live attenuated vs. inactivated influenza vaccines in schools (RELATIVES) pilot study: a cluster randomized trial. Vaccine. 2015;33:535-541.

4. Flood EM, Ryan KJ, Rousculp MD, et al. A survey of children's preferences for influenza vaccine attributes. Vaccine. 2011;29:4334-4340. 

5. Marien AG, Hochart A, Lagrée M, Diallo D, Martinot A, Dubos F. Parental acceptance of an intranasal vaccine: Example of influenza vaccine. Arch Pediatr. 2019;26:71-74.

6. M.A. Rose, J. Stoermann, J. Bittner-Brewe, et al. Effectiveness, tolerability and patient satisfaction of paediatric live-attenuated influenza immunization (LAIV) in routine-care in Germany: a case-control study. Trials Vaccinol. 2013;2:49-52.

7. Jefferson T, Rivetti A, Di Pietrantonj C, Demicheli V. Vaccines for preventing influenza in healthy children. Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD004879. 

8. Sridhar S, Brokstad KA, Cox RJ. Influenza Vaccination Strategies: Comparing Inactivated and Live Attenuated Influenza Vaccines. Vaccines (Basel). 2015;3:373-389. 

9. Mohn KG, Smith I, Sjursen H, Cox RJ. Immune responses after live attenuated influenza vaccination. Hum Vaccin Immunother. 2018;14:571-578. 

10. Hoft DF, Babusis E, Worku S, et al. Live and inactivated influenza vaccines induce similar humoral responses, but only live vaccines induce diverse T-cell responses in young children. J Infect Dis. 2011;204:845-853.

11. He XS, Holmes TH, Zhang C, et al. Cellular immune responses in children and adults receiving inactivated or live attenuated influenza vaccines. J Virol. 2006;80:11756-11766.

12. Mohn KG, Bredholt G, Brokstad KA, et al. Longevity of B-cell and T-cell responses after live attenuated influenza vaccination in children. J Infect Dis. 2015;211:1541-1549.

13. Tosh PK, Boyce TG, Poland GA. Flu myths: dispelling the myths associated with live attenuated influenza vaccine. Mayo Clin Proc. 2008;83:77-84.

14. Cha TA, Kao K, Zhao J, Fast PE, Mendelman PM, Arvin A. Genotypic stability of cold-adapted influenza virus vaccine in an efficacy clinical trial. J Clin Microbiol. 2000;38:839-845.

15. Turner PJ, Southern J, Andrews NJ, Miller E, Erlewyn-Lajeunesse M; SNIFFLE Study Investigators. Safety of live attenuated influenza vaccine in atopic children with egg allergy. J Allergy Clin Immunol. 2015;136:376-381.

16. Turner PJ, Southern J, Andrews NJ, Miller E, Erlewyn-Lajeunesse M; SNIFFLE-2 Study Investigators. Safety of live attenuated influenza vaccine in young people with egg allergy: multicentre prospective cohort study. BMJ. 2015;351:h6291

17. Ambrose CS, Dubovsky F, Yi T, Belshe RB, Ashkenazi S. The safety and efficacy of live attenuated influenza vaccine in young children with asthma or prior wheezing. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2012;31:2549-2557.

18. Turner PJ, Fleming L, Saglani S, et al. Safety of live attenuated influenza vaccine (LAIV) in children with moderate to severe asthma. J Allergy Clin Immunol. 2020;145:1157-1164.e6.

19. PMDA. フルービックHA. (閲覧日2024年9月17日)

20. FDA. It’s a Good Time to Get Your Flu Vaccine. (閲覧日2024年9月17日)

21. Worsham CM, Bray CF, Jena AB. Optimal timing of influenza vaccination in young children: population based cohort study. BMJ. 2024;384:e077076.

22. PR TIMES. インフルエンザ予防接種 全国平均は3,631円。消費税10%の影響でやや上昇傾向だが、本格的なシーズン到来まで「様子見」する医療機関も多数。 (閲覧日2024年9月17日)

<利益相反>
なし

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